貿易協定をマルッと解説!
国会でようやく承認された日米貿易協定は、この1月からようやく発効となりました。
しかしながらこちらの貿易協定は、所謂FTAでは無くて、TAGだと言う事でなんだか世間は混乱しています..。
こちらでは色々と小難しい世界での貿易の決め事を、基本を中心にマルっと解説していきたいと思います。
協定の括りはEPA > FTA > TAGと言う関係
協定にはEPA、FTA、TAGと言う括りがありますが、その包括関係は下記の様になるのを先ず覚えておいて下さい。
EPA(経済連携協定) > FTA(自由貿易協定) > TAG(物品貿易協定)
ここからそれぞれ一つ一つに対して紐解いていきたいと思います。
EPAとは?
EPAとはEconomic Partnership Agreement=経済連携協定の略です。
FTAの対象は貿易だけですが、EPAは貿易のみならず包括的な経済連携協定なので、EPA > FTAと言う関係になります。
EPAはFTAの内容を含み、更に投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含んだ幅広い経済関係の強化を目的とした協定なのです。
FTAとは?
FTAとはFree Trade Agreement=自由貿易協定の略であり、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃を目的とした協定の事です。
TAGとは?
今回米国と締結したTAGとはTrade Agreement on Goods=物品貿易協定の略です。
FTAの中身を大別するとサービスのFTAとモノのFTAに分かれ、モノのFTAだけに該当するのがTAGとなるのです。
FTA = サービスのFTA + モノのFTA
モノのFTA = TAG
∴FTA > TAG
世界統一の貿易ルールはWTOで決められる
世界統一ルールはどの様に作られれば公平になるのでしょうか?
公平と言う観点で考えると、それこそ世界中の全ての国が参加して協議しなければ不公平になってしまう可能性が高くなってしまいます。
時は遡り第二次世界大戦後、自由貿易を発展させる為に世界規模でGATT(General Agreement on Tariffs and Trade=関税及び貿易に関する一般協定)に関する話し合いが進められていました。
その流れを汲み、1995年にWTO(World Trade Organization=世界貿易機関)が設立されていきました。
WTO(World Trade Organization=世界貿易機関)のホームページはこちらです
WTOの目的は関税を限りなくゼロにし、諸々の規制をなくして、企業と その工業製品、あるいは農産物やサービスが地球規模の市場で自由に競争できるようにする事です。
その目的に賛同し、2016年7月以降、その加盟は164ヶ国・地域となっています。
でも想像してみて下さい。
それだけ多くの加盟国・地域があれば、そこで協議される内容は理想的と言うか総花的となってしまい、それぞれの利害関係が対立してしまい話がスムーズに進行する訳は有りません。
更に世界貿易ルールの決定には全会一致が原則と言う事ですから(!)..以下の話へと繋がっていく次第なのです。
主流となって来た当事国同士のルール決め
WTOでの世界統一ルールがサクサク決まれば良い訳ですが、いつまでも待ってはいられないので、当事国同士での話し合いが主流になって来ているのが現状です。
二国間でネッチリと決めていくものもあれば、グループで大枠を決めていくものもある様です。
こちらでは日本に大きなインパクトがあるものを中心に紹介していきます。
太平洋を囲む11ヶ国のルールはTPP
TPP(Trans-Pacific Partnership Agreement=環太平洋パートナーシップ協定)とは、その名が表す通り太平洋を囲む国々で締結を目指している協定です。
日本以外にはオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュー・ジーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの計11ヶ国が参加しています。
そもそもは米国も参加を表明していたのですが、2017年1月に米国は突如離脱してしまいました。
ASEANを中心とした16ヶ国のルールはRCEP
RCEPはRegional Comprehensive Economic Partnership=東アジア地域包括的経済連携の略で、ASEANを中心とした日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6ヶ国を含む16ヶ国が参加する広域的な自由貿易協定の事です。
ASEANとは?
ASEANとはAssosiation of Southeast Asian Nations=東南アジア諸国連合の略で、ブルネイ・ダルサラーム国、カンボジア王国、インドネシア共和国、ラオス人民民主共和国、マレーシア、ミャンマー連邦共和国、フィリピン共和国、シンガポール共和国、タイ王国、ベトナム社会主義共和国の10ヶ国で構成される地域協力機構です。
APECを中心とした21ヶ国で目指すFTAPP
FTAAPはFree Trade Area of the Asia-Pacific=アジア太平洋自由貿易圏の略です。
ASEAN+TPPと言うイメージの、APECを含む21ヶ国で目指すメガFTAとなります。
APECとは?
APECとはAsia Pacific Economic Cooperation=アジア太平洋経済協力の略です。
その参加国は韓国、中国、チャイニーズ・タイペイ、香港、タイ、フィリピン、マレイシア、シンガポール、ブルネイ、インドネシア、パプア・ニューギニア、オーストラリア、ニュー・ジーランド、カナダ、米国、メキシコ、チリで日本を含む18ヶ国となります。
APECのホームページはこちらとなります
貿易協定のマルッとしたまとめ
WTOによる世界統一ルールが待てないものですから、国際協定は二国間同士で行われたり、所属している色々なグループで行われたりしている訳です。
それらは多数存在し、被りは複雑怪奇となっていますので、国際間の政治が難しくなっているのは極めて当然と言えるでしょう。
日本が参加している国際協定も既に多数存在し、現在協議中のものも多数存在しています。
こちらで紹介してはいませんが日本絡みで既に発効している国際協定には日EU・EPAも挙げられ、協議中のものでは日中韓FTAなどが待ち構えています。
また日本とは直接関係有りませんが注目される大きな国際協定には、交渉延期となっているバーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦からなるGCC(Gulf Cooperation Council=湾岸協力理事会)も待ち構えています。
これらを全てきちんと理解して、貿易を行うのは..本当にプロでも大変です。
これからも関連のニュースには最新の注意を払い、的確な貿易業務となる様に心掛けていきましょう!